現職審議会への意見

中村貴司@zou_boku

(30代 中学校)2017


 

私は以下の5点について、私なりの考えをまとめました。

 

 ①授業を準備する時間がありません。

 ②休憩時間がありません。

 ③年間1兆円もの不払い残業があります。

 ④意に反して部活の顧問が強制されます。

 ⑤労務管理が機能していません。

 ⑥最後に文科省にお願いしたいこと

 

私の今回のこの資料の大きなテーマは、“校長、教育委員会が管理しやすい環境を整備すること”である。

 

 

 

①授業を準備する時間がありません。について

 

●授業準備は中学校では空き時間の有効活用が重要であり、小学校では、空き時間も活用したいが、児童を速めに返すことで時間を確保していく必要があるように考える。

 

●やりとり帳の時間をしっかりと確保する事。子どもとの関係作り、子どもの心のサインを見逃さないためのものであり、特に自殺やいじめ等が騒がれている昨今では、学校に求められる重要な役割ともなってきている。しかし、現状では、教員の空き時間に、担任が自主的にやりとり帳をみている状況である。もし、子どもの心のサインを見逃さないことをカウンセラーではなく、教員の仕事とするならば、きっちりと時間割に組み込んで考えるべきである。

 

●私は、学年集会や全校集会では、教員の役割を“集会を行う教員”と“職員室で仕事をする教員”に分けるべきであると考えている。それは、ただ単に楽をしたいからというわけではなく、一人で大勢の生徒を一気に面倒をみれる能力のある教員がもっと評価されるべきだと考えている。授業を行うことができるのは、教員としての標準的な能力であるが、全校を相手に興味を持たせながら話をできる教員の能力をより評価して、そういった先生に、給料をより渡すように評価のあり方を工夫しても良いと考える。また、集会では、結局やりとり帳を書いていたり、出席簿を記入している教員も見られることがあるため、それならばより効率よく仕事をさせるべきと考える。つまり、集会で仕事がない先生には、自分の仕事に向かわせる発想である。もし、生徒が落ち着かないというなら、生徒指導担当の先生が持ち回りにしても良いのかもしれない。

 

 

 

休憩時間がありません。について

 

テーマ “教員の勤務モデルを利用して、「勤務時間内に行う仕事」と「勤務時間外に行う仕事」を明確にすること“

 

学校の休憩時間を確保するには、前提として、多くの教員が休んでいる代わりに、A「誰か他の大人が子どもの面倒をみる」かB「教師の休憩時間には管理責任は問われない形にする」以外に解決策はない。

A「誰か他の大人が子どもの面倒をみる」については、現在中教審で給食の時間にランチルームで、ボランティアを入れるような議論がなされているが、私は反対である。結局、校長、教育委員会がしっかりと人材を確保してこれるかどうかにかかっている。また、ボランティアなりや少ない手当では、毎日継続して給食に来てくれるわけではない。これまで学校がボランティアに頼ろうとしてきた歴史から、うまくいかないことは明らかである。まさにPTAが良い例である。結局めんどくさい仕事として押し付け合いが始まっていく。また、ランチルームで食事をすることについても、どこにそんな場所が学校にあるのか、どこにそんなものを設置するためのお金があるのか、これについては文科省が自治体に丸投げするのではなく、責任を持って制度設計をし、実行力をもって、現場に実践させるよう取り組んでもらいたいことである。

私は、A「誰か他の大人が子どもの面倒をみる」ではなく、B「教師の休憩時間には管理責任は問われない形にする」ことを提案したい。そのために、以下のように2つの教員の勤務モデルなるものを作った。モデル1は登下校を勤務に盛り込んだもの、モデル2は登下校を勤務外にし、朝の会や帰りの会を盛り込んだものである。どちらにせよ、給食はボランティアに頼らず、勤務終了前に休憩を盛り込んでいる。

 

 

【教員の勤務モデル】

 

モデル1 登下校指導を勤務に盛り込んだ場合

○朝の会がないことについては、ICT機器を使った出席確認体制や、掲示板を活用した連絡方法をとれば解消される問題である。また、掲示板に書かれた連絡事項をメモして自分で予定を管理する能力は、キャリア教育の観点からも大切に育てていくべきものであり、取り組む意義は大いにある。もし、これが難しいなら連絡事項をまとめたプリントを配布しても良いと考える。もし、どうしても朝の会をやりたいなら、何か上記の教員の仕事を削って入れていけば良い。

 

○掃除については、業者が入ればよい。特に障害者を雇用している事業所に委託する形でも良いのではないか。事業所の仕事の創出にもつながる上に、コストの面でもまだ現実的なものである。もし、生徒に掃除をさせたいなら、何か上記の教員の仕事を削って入れていけば良い。

 

 

  

モデル2 登下校指導を勤務に盛り込まない場合

 

 

○この表に明記されていることは、教員が勤務時間内に行うべきものとして定義し、これ以外の業務は勤務時間外に行うべきものとして定義する。時間外に行うもの(朝の打ち合わせなど)については、勤務を振り替えてしまう形で良いと考える。

 

○このモデル2の場合、登下校をどうするかの問題が出てくる。登下校については、完全に家庭の責任にしてしまうのか、それとも警察などの別の組織が扱っていくのかを議論していく必要がある。私は、下手に登下校の指導に関わると結局教員がやらざるをえなくなるため、登下校については、きっちりと警察の仕事とすべきである。警察の手がまわらないのなら、警察がコーディネーター役となり、地域住民の力を借りるべきである。もし、これができないなら、教員が順番に時間外勤務として、振り替えをしていく。(ただし、夏休みなどに振り替え休日が取れるような仕組みや期間を設ける必要が出てくる)

 

 

 

この2つの表に明記されていることは、教員が勤務時間内に行うべきものとして定義し、この表に明記されていない業務は勤務時間外に行うべきものとして定義する。時間外に行うもの(朝の打ち合わせなど)については、勤務を振り替えてしまう形で良いと考える。また、これまであった教員の仕事が変わるわけだから、校長、教育委員会が、保護者や地域に教員はこういった勤務であり、これまであった登下校での問題は警察に電話することや家庭での対処をするよう説明責任を果たすことは前提である。

 

 

 

③年間1兆円もの不払い残業があります。について

 

 首相にがんばってなんとかしていただきたいと思います。私は今さらとやかく言わないので、今の学校のおかしなところをしっかり改善してもらえるなら、過去(1兆円という不払い残業)には目をつぶって前に進んでいきたいと思います。

 

 

 

④意に反して部活の顧問が強制されます。について

 

 この項目のテーマは、“多方面の満足度”と“校長が顧問を強制しなくてすむ仕組み”である。

 まず、部活動における今の現状を、やりたくない教員が、過熱した部活動の顧問を選択権なく、強制されるケースが多く見られる状況であると定義する。一方、私たちが望む理想を、部活をやりたい教員が部活をやり、部活をやりたくない教員はやらなくてすむ状況と定義する。理想に向かって、改革するにあたって、乗り越えなくてはならないハードルが、いくつかある。

まず、部活をやらない選択権を担保した場合、代わりに顧問をやる人材をどう確保するのか、もしくは顧問のいない部活をどう減らしていくかという問題に直面する。私はこの問題点を、満足度という言葉を使って表し、教員の満足度だけでは、改革は成立しないと考えている。「教員」だけではなく、「当事者である生徒」、「昼間は働いている保護者」、「管理する校長・教育委員会」、「お金を出す市役所、県庁、国」「外部指導者」の満足度がなるべく高くなるものを選ぶべきだと考えている。

 

 

 例えば現状のままでは、そこまでお金もかっていないので、5「お金を出す市役所、県庁、国」の満足度は高く、また管理をしなくてすむ4「管理する校長・教育委員会」も満足度も高い。しかし、過重な労働環境のため1「教員」や、素人顧問に教えられたり、長時間の練習などもあり2「子ども」など、人によってばらつきはあるが満足度が決して高いわけではない。反対に理想だけを追い求めて、やりたい顧問だけがやり、やりたくない顧問はやらないとすると、代わりに外部指導者を入れようとするなら、5「お金を出す市役所、県庁、国」の満足度は低くなる。反対に外部指導のお金を下げるなら6「外部指導者」の満足度が下がり、人材は集まりにくくなる。

こういったことを踏まえて、私は理想を追い求めて、いきなり断行するのではなく、段階的に改革を進めていく方向性を取りたい。これからその案を提案する。

 

 

 提案1 給特法を改正し、給特法と部活動の手当を全て部活指導をする人間に集中させる。

 

 理想は、給特法が改正され、校長、教育委員会が時間を意識しなくてはならない仕組みにできてしまえば、良いと考えている。そのために、私の勤務している学校をモデルに給特法が改正されたときにどの程度、外部の人材にお金を回せるのかを計算してみた。なお、私は30代の教員なので、40代、50代の教員の教職調整額を知らないため、あくまでも想像の範囲での計算である。

私の学校には、職員が管理職を含めて37名務めている。年齢の構成がおよそ20代が12人、30代が5人、40代が4人、50代が16人である。仮に教職調整額の平均額を、20代は8、000円、30代は13、000円、40代は18、000円、50代を23、000円とする。

(※40代50代の教職調整額については憶測の域を出ないので、情報提供をお願いいたします。より良い意見にするために、ご意見等 いただけましたら幸いです。)

学校全体での教職調整額を計算すると、601、000円である。また、本校では、運動部(吹奏楽部)の主顧問として土日もほぼ休みなく部活を行い、部活動の手当をもらっている教員の人数が、18人である。副顧問や土日どちらか休みにしている教員の人数は6人である。部活動の手当は4時間以上で3、000円。1か月に土日が8回あると仮定し、ほぼ土日休みなく部活している教員の活動日数を7日、副顧問や土日どちらか休みにしている教員の活動日数を4日とすると、学校全体で部活動手当が450、000円である。

 つまり、給特法が改正された場合、本校では1ヶ月に601、000円+450、000円=1051、000円を指導者に渡すことができる。本校には活動日数、活動時間の多い部活が14部活ある。もし、その半数の部活で顧問をやりたくないということで外部指導者を入れようとしても、一人あたり、最大で150、142円を月々渡すことが可能になる。活動日数にもよるが本業をやりながら、スポーツ指導をするならこれまでに比べて十分な金額であり、外部指導者の満足度も確保できると考えられる。なお、この計算では、部活をやりたい教員の分の土日の手当ては計算されていないので、その点はこれから考えていく余地がある。

 

 

 

 提案2 給特法が改正されない場合

 もし、給得法が改正されない場合、以下のような運営の仕方を提案する。それは、市町村の中で、一つの学校は土日もOKな学校、その他の学校は、平日のみとしてしまう方法である。

 

現在、小中一貫教育で中学校の見学を小学生はできる環境が増えてきている現状を生かし、部活をやりたい子は、その学校へ進学し、そうではない生徒は他の中学校へ進学するというものである。もちろん市の財政の状況によって、一つの学校だけではなく、いくつかの学校が土日もOKにできればそれが良い。そうすることで、勤務時間外の土日に活動する学校に部活動手当を集中させることができる。

 

 

 

 

土日について記載してきたが、平日については、②について、で示した教員の勤務モデルのように勤務終了時刻である16:45までとする。6時間目が終了してから16:45までに約1時間半部活が行うことができ、決して短いわけではない。

 

 ただ、どちらの案にせよ、財源がない中での運営のため、やはり校長、教育委員会から保護者や地域から理解を得られるように説明することが一番大事なのではないかと考える。

 

 

 

⑤労務管理が機能していません。について

 

 これまで説明してきた教員の勤務モデルや部活の体制を整え、教員の労務管理をしやすい環境を作ることで、校長、教育委員会が労務管理ができるようになってくると考える。その上で、現代社会は“多様性”のもと、様々な組織のあり方やシステムが混在している。それを踏まえて、最終的には、校長、教育委員会が時間軸で教員の労務管理をしなくてはならない仕組みが必要であると考える。その限られた中でどの程度の業務にするのかを全国の校長、教育委員会がその学校の実態に合った形で考えていくのが良い。

 しかし、現状では、教員の仕事内容を管理できるものは、時間割か4月当初の職員会議の資料で決定した公務分掌しか存在していない。教員が一日どのくらいの仕事をしているのかをもっと、時間割に明確に記載していくか、教員毎に個別で一日のおよその流れでどのくらい教員が仕事をしているのかがわかるような資料を作成するべきだと考えています。校長も新しい仕事をふるならば、その資料を見ながらどこに新しい仕事を組み込めばよいか考えるようになる。また、新しい仕事が無理ならば、その資料を使って、教育委員会に説明をすることが可能になる。

また、校長や教育委員会には、教員の勤務時間に関することやどこまでの苦情(登下校など)を言えるのか、部活について教育課程外だという説明をきっちり地域、保護者に説明することをする必要がある。

  加えて、緊急提言にもあったタイムカード、留守番電話はもちろんのこと、企業のパンフレットの電話番号の近くに営業時間を示しているように、封筒・学校案内に、営業時間なるものを記載することも併せて行いたい。

 

 

 

⑥最期に、文科省にお願いしたいこと。

 

 私たちは、現在の学校に関わる労働環境を改善したいと考えています。それは、教員のためだけではなく、余裕を生み出すことで、授業準備などができ、より子どものために働くことができるようになるからです。

 私からお願いしたいことは、新しい方向性ができたとして、それを実効性を持たせて取り組んでほしいことです。もし、これまで同様に通知程度ですませ、各自治体の多様性に委ねざるを得ないのであれば、これまで説明してきたようにいくつかのモデルを提示して、ある程度の枠の中で、各地域で特色を持たせるように管理してください。単なる通知だけでは、現場はもちろんのこと、県や市も困ってしまいます。これまでのゆとり教育の導入の失敗も現場に正しく伝えてこなかったからだと考えています。

 どうか、校長、教育委員会が管理しやすいように仕組み作り、継続的な指導・援助、罰則規定の設定をして、現場が機能するようにしていただけたらと思います。