教員(中高)×講師×教職志望者×教員家族×保護者 座談会 2017.8

 

【目的】現状への疑問点や問題提起を共有し、それぞれの立場からの働きかけを考える

【参加者】9名

 

公立高校教諭

 

 

私立高校講師・大学院生

私立高校教諭

公立中学校教諭

教職志望者


元小中学校教諭

公立高校教諭

教員家族

保護者




議事内容

※「・」は発話者の言葉、「→」はその他の参加者の言葉を表しています。

 

 

【私立高講師】

 

・教員の持続可能性を常に考えている。自分を大切にすること。自分は運動部で100連勤したこともあり、体調を崩した。部活だけで月に90から100時間に達し、それだけで過労死ラインだ。自己管理を考えられない人は無責任だが、考えられない状況はおかしい。

 

・自分が中学生の頃、担任が4~5回代わった。生徒のために、という言葉でたくさんの仕事を押し付けられる。その結果自分が死んだら何も残らない。

 

・社会への啓発をしたい。社会との連携が大事、とかよく言われる。教職課程6月号の内容に(ある保護者の発言として)「教員は若手なら寝ずに働くべきだ」というのがあり、その言葉を載せて出版した会社があった。

 

・教育系商社に就職したい。教員を助けたいと思ったから。そこの面接で「教員って忙しいんですか?」と聞かれた。ニュースがたくさん出ているにも関わらず、いろいろ知っているはずの人事担当者が何もわかっていない。

 

・教員はなんでもしてくれると思っている地域、保護者もいるんではないか。そこに啓発していけば、部活問題の解決にもつながりうる。

 

・講師の部活問題。いま自分は部活を見ていない。見ている講師は週●コマまでは部活でお金がもらえる。野球部担当講師は負けたあと、「中学の試合を見に行く。今の一年が頼りない」と、スカウトをやろうかな、と言い出した。来年の雇用もわからないのに。いったい部活は誰のものなのかと思う。自分が強いところの監督でいたいのだろう。教員側にも問題がある。そういう人たちの意識改革を管理職や教委も通じてやらないといけない。

 

→部活指導したくて教員を目指す主要5教科の講師で、やりたいから率先して部活を見ている、因果はわからないが、数回採用試験に落ちている。

 

・部活にたいして県教委はどうしたいのか。昨年某県でバス事故があった。野球部のバスが事故を起こした。自分も採用されるときに「バスの免許とれば」と言われた。でも取って運転していたら、自分が同じような事故を起こしていたかもしれない。

 

・上記の県教委は部活などで送迎する可能性ある教員を集めて講習会をやった。企業ならばこういう業務を切り離すはずだ。

 

→生徒送迎禁止としている県もある。

 

・これでは教委がどうしたいのかわからない。事故の危険性を分かっていて、それでも教師に運転をさせたいのか。(バスの免許を取ることを暗に推奨している?)

 

・勤務管理はPCで出退勤をつけていたが、あとで直せるもの。しかも土日は出勤しても記録するなと言われている。つまり管理がなされていない。部活は4時間で2000円程度。一方で●時には学校をでなさい、というが。

 

・地方の私立の例:残業代があったが、本俸を低くして週20時間分つけるというやりかた。

 

・超勤4項目を知らない校長がいる。ある学校の面接のときに尋ねたら、答えられなかった。

 

・以前勤務した学校では、初任研修が定時の10分前に始まった。定時に終わるわけがない。

 

 

【私立高教諭】

 

・教職調整額は本校でも出ている。しかし超勤4項目は適用されないと校長に言われ、ならいったい何が対象なのかはっきりさせるよう求めている。

 

・私学が諸悪の根源。勉強でもそうだが、夜まで残業代無しで補習して合格実績、などとまず私立が仕掛ける。すると公立が追っかける。進学校の教員は遅くまで学校に残ることになる。

 

・スポーツもそう。最初に私立が強化を始め、公立が追った歴史。

 

・私学助成金の存在を世間に広めたい。「税金から助成をもらう一方で、スポーツ特待や施設にカネを注ぎ込む実態」を知ってもらえば、お金のこととなれば、世間の反感も期待できる。

 

→助成金の趣旨に沿って、全額を施設の充実などに使っていれば問題ないのではないか。

 

・おカネに色はつけられないので、やはり問題あると思う。スポーツにかけたお金の分は減額、などの措置は必要と思う。

 

・エビデンスはないが、都立城東高校が甲子園に出た時、「土日を中心に年間150試合を行い、実戦経験で私学に対抗した」という話が広まり、あのあたりから、まず公立高で土日部活当たり前が始まり、中学に広まり、結果部活時間の大幅増になったと思う。

 

・勤務校で腹が立つのは、教員は研修日(事実上の週休日)があり、週6で済む。だから部活未亡人や部活離婚があるわけがない。一方で生徒は週7生活を余儀なくされている。また公立の先生のほとんども週7だ。ここが許しがたい。

 

【公立高教諭】

 

・学校は古い性規範が残っている。男性教員は運動部を持つものと。中学の場合、男性教員の78%が運動部顧問で、女性を20%以上上回っている。逆に文化部は、女性顧問の割合が男性を20%以上上回る。

 

・「男で文化部はダサい。入ったらオタクだ」高1生徒の台詞。自尊心を保つために運動部に入っているような実態。

 

・高校では男性教員の70%が運動部、 文化部は29%。 女性は5割が運動部顧問。こうなる理由はわからない。

 

・某公立高では女性教員が30人いて、20代二人だけが運動部顧問。一人は体育教員で県の役員、もう一人は熱心な顧問の影響を受けて、そういうものだと自ら希望して引き受けている。

 

・一般公務も頑張る、比較的バランスの取れた熱心な顧問が、あるとき男子部員たちを集め、「お前らに男としてのプライドはないのか」、キャプテンに「女子に負けないように頑張ってほしい」と言っていた。これらは差別的発言である。

 

・職員室で、人間関係に悩む男子生徒を指して「女の子ならわかるんですが」これも差別的発言。

 

・要は、学校ならではの既定の性規範のなかに部活動も組み込まれている。

 

・「男は運動部」という考えがいつ発生したのか。→継続課題

 

 

【公立中教諭】

 

・新卒で中学教員になった。某運動部の副顧問から始まったが、すぐに主顧問が産休に入り、自分が主になった。おかしいと思いつつ、周りがしているのでそれを仕事と思った。一番辛かったのは、夏休みに体育館工事があったとき。担当者が地域の小学校の体育館を借りて各部に割り当てたので、毎日練習を余儀なくされた。

 

・妊娠中も審判をしなければならなかった。

 

・育休にはいってネットでいろいろ発見し、こういう会にも参加するようになった。

 

・復帰して、顧問拒否はできなかったので、同じ運動部の第3顧問になった。ただしほぼ行っていない。それでも仕事が多すぎて、育児との両立が苦しい。

 

・某公立中では5年目以下の教員が多い、講師1年目にも担任&顧問もいる。女性の主顧問は一人だけ。

 

・民間だと時短はその通り帰れる。しかし教員は時短でも帰れない。時短なのに修学旅行にも行く、部活顧問をする実態がある。

 

・3年の担任は妊娠できない? いつならできる?という感じである。

 

→担任の役割の重さは学校による。底辺校ほど大変。

 

→学級担任に加え、部活の部員の担任も兼ねている状況。部活動を持つとは、もう一クラス持つようなもの。

 

→部活で生徒指導、というがその中で問題が起こる。教員が付きっきりでないからか。

 

→自分の子供を持たない、社会の子供を育てるという意識を持っている。

 

・生徒にとって身近な大人は親か教員になる。だから(人生の)モデルとして生徒に見せよう。そう思って働いている。だからずっと働くではなく、自分の家庭を大事にする。

 

→大会以外にも、高野連から研修や合宿引率の仕事が。学校から手当てはなく、一泊二日の引率では競技団体から1万円を切る程度の謝礼(?)が出る。高野連から校長(学校)に、野球部顧問の人員要請が来る。

 

→土日に関しては勤務としての命令はできない。

 

→ある男性教員の例。その競技の顧問をしていないのに、専門知識と経験があるので、役員をしてほしいと依頼が来る。審判講習万単位を自腹。教員に地域のスポーツ振興を押し付ける。

 

→フィギュアスケートなどの特殊競技(校外のクラブで練習し、高体連主催大会の時だけ、学校所属として出る)を、某公立高では希望者が出ると文化部顧問が輪番で引率していた。それを問いただしたところ、管理職が行くことになった。

 

 

【教職志望者】

 

・3月まで学生で、いま試験勉強中。同じ立場の一人が、大学で模擬面接があり、面接役が元校長だった。なので見解を聞いてきた。部活は職務だと言われた。

 

・「希望しない部活を持たされてはどうするか?」という質問に対し本音で「希望しない場合はやりたくない」と答えたら、元校長は職務のひとつだから、やるものだ。嫌なら教員に向いてないと

 

・本務が勤務時間で終わらないのに、勤務内に部活を命じるのはおかしいのでは、と問うとその通り。いま働いている先生もそこをわかってやっているとの答えだった。

 

・最後に「あなたが問題意識をもってやっているのはいいが、君が何を言っても変わらないよ。そういう世界だ。」

 

・教員は未来を作る、未来を担う人材を育てる立場

 

・上記の面接の話をまとめツイートしたところ、すごい反響があった。教員外からのコメントも多数あった中で「教員だけが大変なわけではない」と知った。また1割程度、「教員はそういうものだ、嫌なら辞めろ」のようなものもあった。

 

・教員がくたくただったら、生徒は相談する気もなくなるだろう。

 

・6割が過労死ラインを越えていることを知らずに教員を目指す若者たちは「がんばる。しょうがないよね、いなすしかないよね」の発想になってしまう。

 

・学校内の実態は世間に知られる機会が少ない。リアルに話し合う場がない。それでネットでやろうと思ってサイトを立ち上げた

 

 ⇒「ソラと教育を考える/Discuss Education with SORA」のページを見る

 

・もっと世間の関心事になってほしい。

 

 

【保護者】

 

・自分は中高時代運動部所属だったが挫折してやめたので、子供には部活をやってほしいなあと思った。子供は某運動部に入った。親としては社会性、礼儀、仲間とのつながり、勝つ喜びを期待した。

 

・試合会場に行くと、顧問の暴言、ミスへの罵り、感情に任せて親の前でも椅子を蹴りあげる。この人たちはコーチングを学んでいない。勝利至上主義に片寄っていると感じた。

 

・練習試合に保護者が送ると、生徒が一列にならんで「お願いしまーす」「ありがとうございました」と頭を下げるが、心が入っていないように見えた。一方で、電車の中では野球部員のマナーが悪い様子も目撃した。

 

・親の期待とだいぶずれいてると感じた。勤務している会社に運動部があるが、外部コーチを使って成果が上がった。学校の運動部も外部コーチを入れたらいいのに、真のコーチングを広めるべきではないか、と思ってネット検索をして、教働コラムズに行き着いた。

 

・子供の部活を見ながら「先生大変だよね、土日もやって。まさに聖職者」と思った。わかって先生達もやっていると思った。教員の声を聞く機会も全くなく、保護者も考えようとしないのが実情。

 

・近所の子が大学を卒業して講師として中学へ。しかし1年でやめた。詳しい理由は聞いていないが、たぶん大変だったんだろうな、と。

 

・我々(民間企業)は採用について敏感で、いい人材をとらないといけない。ダイバーシティが重要。女性に優しい企業の認定マークというのがあり、それをとって名刺に載せて、人事は採用する。女性社員を積極的にダイバーシティ研修にいかせるなど。

 

・自分も若い頃は営業で連日11時、12時。でも5年間で残業をつけたことがなかった。しかし電通の出来事から社会が変わってきて、いまは定時に帰ろうとなっている。PCの電源と入出が連携している。

 

→教員のみならず、生徒も生産性が低い。

 

→誰もが、どんなことでも、辛いことを辛いと言えるようになるのが理想。どうしても辛い時には、その辛さを回避する必要もある。一方で、スト

レスを乗り越えて生きていくのが人間なので、適切な程度のストレスや辛さならば乗り越えていけばいい。ただ、やはり前提としては、誰もが「苦しいな」という時は「苦しい」と周りに言えた方がいい。

 

→自分は担当教科で人を育てられないから、部活で育てるという教員がいるが、それはおかしい。

 

→部活熱心なひとは趣味性が満たされているので、劣悪な環境にも文句を言わない。

 

→解決策は民間企業参入、自治体からの提供、生徒にはこの二択だが、私は後者を支持する。前者だと勝利至上主義に進むのでは?

 

→部活は本務か否か、に答えがでない。

 

→教員免許を取得する課程で、部活動という授業は含まれていない。部活動をやりたいから教員、はあってはいけない。

 

→自分が一番できる部を見たら楽しい、だからこそ、やってはいけないと思っている。

 

→もし自分のお子さんの部活で顧問が顧問拒否したら?

 

・娘を含め皆で楽しんでいるものだから、残念、なんとかしてくれという気持ちになる。全部の保護者が教員の立場を考えていないわけではない。でも残念に思う親が多い。

 

→保護者期待、保護者からの目を変えていかないと。管理職が発信しないといけない。

 

→勉強では戦えないから、部活で頑張れ、と顧問がいってしまって、さすがにクレームが来た。

親が文武両道を期待する。

 

→文武両道と言っても、実態は分業の学校も多い。校訓を文武両道と謳っていても、実態は特進科など(文)とスポーツ科や普通科(武)で分かれている。