Lesson 1 教師と講師の違いについて

 

 

教育界では「講師」と呼ばれる先生がかなりいるが、講師とはつまりは非正規雇用の教員のことである。

講師となるのは、教員採用試験の合格を目指す人が多い。中には、出産育児で一度教員を辞めて、また再度教職の道を歩む人がなる場合も多い。

講師にも「常勤講師」と「非常勤講師」の2種類いる。前者と後者の違いは、前者は正規と同じ仕事量であり、後者は時間給であることである。

どちらも1年間の雇用である。なぜか次年度は同じ学校に雇用されず、雇い止めになるか他の学校に行くことになる。(自治体によって異なるかもしれない)

基本的に、常勤講師は正規の教員と同じ立場である。多くは副担任・副顧問であるが、講師歴が長かったり、採用された学校の事情によっては担任、部活顧問が任されることがある。校務分掌は必ず持つ。

非常勤講師は時間給のため、担任、顧問、分掌は持たない。稀に管理職から「採用試験で有利になるし勉強になるから」と顧問をさせられるケースもある。

 

 

常勤講師の悲惨な例としては、大卒すぐに講師となり、採用試験を控えているのに担任、部活顧問になってしまうこともあることである。だいたい1年の担任となるのだが、4月には全てが押し寄せる。

右も左もわからない状態で、新クラスの準備が始まる。朝の会の進め方から座席表、年度はじめの提出物整理、係決め、各種の報告…。4月の1週目はほとんど学級活動であり、担任として1年で一番重要な期間であるのに、初任者指導すらつかない。(他の先生もいっぱいいっぱい)

授業準備もままならない中で授業がスタートする。

4月の終わりあたりには授業参観、学級懇談会もある。だいたいこの時期までに学級の掲示物を揃えておかなくてはならない。懇談会の流し方も教わらないと大変なことになる。

部活へ行けば、総体を控えた3年が、レギュラー争いに向けてピリピリしている。新しく入った一年生は遊びの延長のような気分なので2.3年がイライラしているのもよくある光景である。「去年の顧問は〜」と文句を言われるのもよくある。

5月になると疲れがどっと出るが、総体前なので部活を休みにすることができないままGWが始まる。

5月になり、ふと気づくと採用試験の願書提出の締め切りがもうすぐだと気づく。そして全然勉強できてないことに気づく。

授業準備も学級経営も自転車操業のまま、土日は部活があり休めない中で採用試験の勉強もしなくてはならない。

そして7月の採用試験直前にあるのは三者面談である。

ほとんど勉強できず、一次試験で落ちる講師がとても多いのが現状である。

仕事熱心であればあるほど勉強する時間がないので落ちてしまうのである。

そして1年、どんなに一生懸命働いても、続けて同じ学校に留まることは出来ないので、泣く泣く愛しい生徒と別れて次の学校に赴く先生が多い。そういった生活を何年も続けている講師の先生はたくさんいる。

 

 

では、担任のない講師は楽なのかといったら決してそうではなく、担任がない場合は授業数が格段に増え、学年をまたいで授業を持つことが多いのである。

 

 

さて、非常勤はといえば、授業のコマの給料しかもらえないので基本的には授業だけやっていれば良いのであるが、だいたいはそうはいかない。

空きコマの生徒指導に駆り出されたり、給食、清掃指導、委員会などの指導もすることがある。

また、職員会議は給料が出ないので出席は必須ではないが、そうもいかないので出席している人が多い。

結局、時間給なのにもかかわらず、他の先生たちと同じくらい在校して、残業代はおろかボーナスさえもらえないのである。

 

 

非常勤になると年休が少ないので、長期休みになかなか年休が取れず、誰もいない夏の職員室にぽつん…というのも学校あるあるではないだろうか。

 

 

生徒から見て、講師の先生と正規の先生は立場上同じである(非常勤は別として)。にもかかわらず、不安定な雇用、安い給料で、正規の教員と同じ働きが強制されているのである。

現在、教育に対する税金を抑制するため、講師の数が格段に増えている。かなりの数の講師が現場で働いている。(近年は再雇用も増えている。再雇用教員は給料が現役時代の約半分だとも聞く)

講師の増加の歪みは、結局は教育の劣化に繋がっている。講師の労働環境の悪さもそうであるが、1番は生徒との関係である。信頼関係を1年かけてようやく築いた先生が転任してしまう。このことは現場にとっては大きな痛手なのである。

行政はいとも容易く講師を増やすが、教育の質を大きく落としていることもまた自覚すべきである。