【企画概要】
テーマ:学校の働き方改革〜勤続三ヶ月、新任から見た学校〜
日時:7/14㈯16:00〜18:00
会場:京都駅周辺
公募対象:平成30年4月から教員として働き始めた方(国公私立、小中高いずれも可です)
今回は本年度から新たに教員として働き始めた新任の方をお招きして、現場教員に何が必要かを話し合いました。ある競技の部活指導がしたくて教員を目指したという新任のAさん。教員の長時間労働や部活問題について、自分の立場から見えない問題点を知りたいということでご参加くださいました。また、ご自身も部活経験があり現在もその競技を続けているという地域の市議さんにもご参加いただきました。
【参加者】
A さん(初公高・主)
教員1年目の初任者。公立高校教員、運動部主顧問。サラリーマン退職後、教採を受けて教諭に。ある競技の指導に携わりたくて教員を選択した。
B さん(公中・主)
公立中学校教員、運動部部主顧問。部活と教員の超過勤務について関心がある。個人的な時短の取り組みだけでなく、全職員と共有するためはたらきかけている。
C さん(公中・副)
公立中学校教員、初任で未経験競技の顧問経験。育休復帰2年目で復帰後は副顧問。
D さん(私高)
私立高校教員。学年主任として学年運営の効率化に取り組んでいる。
E さん(市議)
市議会議員。運動部活動経験者で今でも競技プレーを楽しんでいる。教員に限らずみんなが気持ちよく生きていくにはどうしたらいいのかをテーマにし市政に取り組んでいる。
記録(コラムズ運営)
(※ 公開する内容は議事の一部です。個人や地域を特定できる話題は大幅に割愛しています。)
―――初任者の方へ。教員になる前のイメージと実際なってみてのギャップ、気づいたことはありますか?
A さん(初公高・主):一番感じたのは手続きの大変さ。例えば会議、前職は会議をするならテーマについての意見を用意してから話し合いが始まる。職員室での会議は会議に行ってから内容を知らされる。対外的な文書を出すときに管理職の決済をとらないといけない。現場教員に裁量が少ないと感じる。
C さん(公中・副):会議は確かに読み上げが多い。
B さん(公中・主):うちの学校は職員会議では分厚い書類が出る、それを前日に教務の先生が綴じる、且つ内容のほとんどは前回とかぶっているので、職員会議の電子化について提案した。連絡事項に時間をかけて本来しゃべるところを喋らずにとりあえず終わる。会議時間上限は決まっているのでこれはいいことだが、切られるからこそ、その中で結論まで出さないといけない。
D さん(私高):自分は学年主任なので、学年会議を2か月に3回ほど主催する。全員にPC支給対応。グーグルドライブにレジュメを書き込み。事前に質問があれば会議前に解決する。ペーパーレスだが、本当にナイーブな生徒の情報はオンラインには書かない。60分ピッタリで終わるように徹底している。
―――公立でもパソコンは一人一台支給ですか?
A さん(初公高・主)、B さん(公中・主)、C さん(公中・副):されている、電子化しようと思ったらできるはずだ。
C さん(公中・副):ただしパソコンは頑丈な鎖(笑)につながれていて、持ち出しできないようになっているので作業場所が限られる。
―――教員の裁量について、初任者の方は裁量がないと感じているようですが、お二人はいかがですか?
C さん(公中・副):学級通信は管理職の目を通さなくても出せる
B さん(公中・主):学級通信は裁量があると感じる
A さん(初公高・主):県の報告書や夏休みの各クラブの予定表、保護者宛の文書など、発行前に管理職を通してくれと言われる。活動の報告は別途行うし、何かあった時に責任を求められるのは顧問なのだから、管理職の確認は必要ないのではないか。予定について管理職から修正をうけたりすることはない。目を通すだけの流れならもっと裁量を渡してくれても良いのではないかと思う。細かい連絡などは生徒とのSNSを利用している。
B さん(公中・主):中学校では基本的に生徒とラインなどはしない。
D さん(私高):埼玉県では生徒との私的な通信はするなということになっている。
C さん(公中・副):夜など勤務時間外に連絡が来ても対応に困ることがあるのでやりたくない
A さん(初公高・主):それについては、生徒から朝練の欠席連絡は7時から、夜は21時以降の連絡は無しと徹底している。
―――教員はブラックだと言われているが、自分の働き方はブラックと思いますか?
A さん(初公高・主):この3か月間の勤務で自分はブラックだと思っていない。平日残業でも学ぶことが多いので、まだまだ教えてもらいたいという気持ちがある。土日の部活指導だけで超勤80時間になるが、自分の希望の部活を受け持っているので全く苦ではない。今は独身なのでそう思えるが、もし家庭をもった時はブラックなのだと思う。子供がいてこの働き方をするのはいけないと思う。自分は今はいいけど、先輩方からして何がブラックなのか、この場で知りたい。
C さん(公中・副):子供ができるまではブラックな働き方をしていた。今はグレーな働き方。業務量が多すぎるとは思う。今は本来の授業を考えるとかよりも、福祉の役割が大きくなっている気がして、精神的にもしんどい。中には家庭で食事をとらせてもらえないから給食をたくさん食べようとする子もいる。長期休暇になると給食がなくなるのでとても心配で、おにぎりを届けたこともある。
B さん(公中・主):自分はブラックではない。なぜならtodoリストを作って時短に取り組んでいて計画的にやっているから。一方で全体として思うのは業務量が多すぎるということ。学校はNOといえずに引き受けていることが多い。部活についてはガイドラインに沿った活動量にしているが、大きな大会前になるとどうしても休日が潰れてしまう。しかしこれは主顧問判断で“自分で”スケジュールを組むことなので納得しながらやっている。保護者から活動量を増やしてほしいと要望があり、管理職からも練習時間を増やすよう言われるが、自分は貫く。勤務校の他の部は活動時間が長すぎる。
―――ブラックとグレーの境界線は?業務過多、勤務時間の目安は?
C さん(公中・副):今は超勤50時間台で頑張っているけど、平日18時までは終わらないので仕方
がないとしても、週2日休めることは本当に大事。私にとって週休2日が境界線。
B さん(公中・主):運動部主顧問なので土曜に関しては午前中練習があるし、練習試合は“自分で”いれている立場。週休2日は維持できていない。運動部主顧問として“自分で”壊している。なんとか日曜片方は死守したいが、大会前の連休は部活を入れてしまった。やりたい生徒の気持ちとプライベートとの間で葛藤がある。なので平日アフター5を大事にしたい。7時台8時台に家族で夕ご飯を食べれるラインを守りたい。
A さん(初公高・主):独身なのであまり気にならない。ある競技を教えたくて教員になったし母校なので、まだまだ頑張りたいと思える。もし自分が違う競技の顧問をしていたら、絶対ここまでやらないと思う。
―――自分の意思でコントロールできるというのが境界なのか
B さん(公中・主):はい。部活の予定は自分の都合でいれている立場なので、副顧問の方には無理しないでいただいている。
E さん(市議):意欲的に部活をやりたいからというのはよくわかる。自分も部活経験者で、今も社会人でやっている。先生はプライベートなくやっているが、それがスタンダードになってはいけない。先生が部活を見るのはいいが、業務が終わった後、いち市民としてやればいいのではないか。やりたい人はやれるし、やりたくない教員の方はやらなくていい環境になる。
―――部活動指導員についてはいかがですか?
A さん(初公高・主):高校はモデル校の募集があり、勤務校からも申請した部があったが通らなかった。
C さん(公中・副):ひとつの部に部活動指導員が採用されている
―――市議会では小中のことに影響力のある意見を出せるものなのですか?
E さん(市議):あまりできない。部活に強さを求めるのか?公立は部員の意識の差が全然違うから、共存させるのは無茶があると思う。
―――部活について、どのように取り組んでおられますか?
B さん(公中・主):僕自身のスタンスとしても、部活動は、例えばサッカーだったらサッカーが好きな人が来て、そこを居場所にしてやるくらい、何せ僕自身がそんなに本気でやっていない。行きたい時にやって休みたいときに休む。3年の春以降はそんなにやってなかった部員も本気になってくる。本気でやりたい部員らからしたらサボってる人を試合に出すのかと不満が出る。それでも主顧問として判断をしなければいけない。練習時間に関しても、例えば昼から放課で早い時間から部活ができるような日でも、練習終了時刻を2時間後と決めている顧問は勤務校にはいない。自分は平日は2時間というガイドラインを絶対守っている。それを予定表に書いているのは自分の部活だけ。
A さん(初公高・主):自分が学生で部活をしていたころは、週7で、夜練のある日もあった。それで成果も出してきたが、指導者の立場になってからは自分の経験にとらわれず、効率の良いメニューを実践している。
この競技は試合時間が短く、練習を2時間以上はやれない。人数の関係もあるが、今は1時間半から2時間。土日は両方部活をして、オフを月曜日に設定している。
C さん(公中・副):自分は副顧問なのでほとんど部活指導には出ていない。実は当自治体の中学校はガイドラインの指針に結構厳しくて、2日の週休日や土日片方は完全休養日とするガイドラインを守らなければいけない、という通達が徹底している。
A さん(初公高・主):僕は4月から働き始めて丸一日休んだのは2日だけ。僕は部活が好きだから苦ではないが、先ほども言ったが専門競技でない部顧問だったら苦だったと思う。だから、これについてこの場で考えたい。
―――公立中学校で52.1%、高校で45.0%の教員が、担当する部活動について競技の「経験なし」と回答している2014年の調査データがあります。
参考記事 ⇒ YAHOO!ニュース「素人の部活顧問 先生の嘆き 強制的に顧問担当、種目は選べず」2016/4/3 より
C さん(公中・副):私は初任で未経験顧問だった。はじめはルールもわからなかったが、先輩教員からとにかく練習試合をして相手校から学べというアドバイスをもらい、土日に練習試合を入れていた。受け持った競技は顧問が審判をしなければならなかったので、審判講習を自腹で受けて、よくわからないまま審判もしていた。
D さん(私高):都の高体連もそう。
C さん(公中・副):初任だったので、これが普通だと思っていた。
D さん(私高):自分はある競技の指導がしたくて、その競技が強い学校に就職した。当時は長時間労働も無休日練習もこなしていたが、PTAなどで保護者の本音を聞く中で、週7生活は生徒保護者への負担が大きいことを知った。休日の休みは入れていった方が良い。
学校は狭い世界、その中にいてしまうと自分が街に出て様々なものを吸収する時間がなくなる、これから様々な世界にでていくこどもたちと関わる中で、狭い視野ではいけない。
B さん(公中・主):月曜オフだと生徒は休めない。部活が好きで入っている生徒に、部活だけの世界を見させてはいけない。部活も大事だけど、人間としての豊かさを。
C さん(公中・副):毎日同じではなくそれ以外の生活を知ってほしい。うまくなりたいのだったら自分で家でできることもある。いろんなものを見てほしい。
E さん(市議):選択肢を与えることは大切。やろうと思う子は自分で考えて対策、何をすべきかを分かっていくような指導をした方が将来的に通用する人づくりになるのではないか。
(地域的に展開するクラブチームと部活、プロのチームとの関わりについて。ローカルな情報交換となるので議事録では割愛する。)
―――部活動手当がでなくても土日の部活をやりたいですか?
A さん(初公高・主):出なくてもやりたいです、自分のやってきた競技なら。別の競技ならやりたくないというのが本音。この競技の指導者として食べていくには、基本的に実業団か教員になるしかない。私塾で競技指導運営費で食べているところは全国で●件しかない。ここは競技指導だけでなく学童としての役割も兼ねている。
部活は無くならないと思う、なぜかというと学校自体と地域が、部活動に対してこどもの躾を任せている面があるから。自分が教員になる前に外から見ていた時、親も学校も躾を部活に押し付けているなあというイメージがあった。
夏休みは40日中10日、3日に1回くらい休みにしていて、生徒が休みの時に自分は初任者研修や地域研修に出る。
―――例えば部活がない場合、定時退勤できますか?
B さん(公中・主):6月に関しては超勤100時間超え。内訳は地域が20時間、部活30時間、これがなかったとしても60時間程超勤がある。
A さん(初公高・主):定時は厳しい、僕自身は平日の出退勤時間はつけてない、土日だけつけたら部活で80時間。タイムカードなし、エクセルで月末に適当申請。
前職の時は7-24時勤務、超勤分は営業手当に含まれて一律支給だった。
教員になって、これが教員の仕事かと驚いたことは、福祉面のこと。児童相談所、合理的配慮という面での仕事が多いと感じる。学校でできる配慮がどこまでか、はっきりさせた方が良い。
C さん(公中・副):家出した生徒を探しにいったり、暴れる生徒を親に返せない家庭状況だったりすることも。そうなると勤務時間なんて関係なくなってくる。いじめの対応もある。
B さん(公中・主):先日県教委主催の研修会に行ってきた。教頭校長県教委市教委の人なども参加していた。参加者は50代ばかり、20代は少なかった。その中である管理職が「こんなことに取り組んでいるけど結局は変わらないと思う」と言っていた。
ワークライフバランスコンサルタントが講師のワークショップにも行ってきた。その際に学んだことを活かし、勤務校でアンケートを配って「必要だがなくても良い仕事、しなければいけない仕事、」を教員から集め、会議を設けることができたらいいな、と考えている。「絶対やらなければならない業務」と思われているところから、何か切ることができないか。
A さん(初公高・主):すべての仕事が見えているわけではないので、現段階では何を減らすべきかわからない。何が無駄かわからない。
―――「学校における業務改善及び勤務時間管理等に係る取組の徹底に関する事務次官通知」では、このように業務仕分けされています(画像は通知の一部)。
A さん(初公高・主):(図表を見ながら)「登下校に関する対応」は基本的には学校以外が担うべき業務とされていますが、勤務校では勤務時間外に当たり前にやっています。立ち番だけでなく、改札に立ったり、電車にも乗ります。
―――電車に乗っての登校指導に必要性を感じますか?
A さん(初公高・主):正直、あると思います。地域の方から、生徒の利用マナーについてクレームが多く来るので。
D さん(私高):それはJRの仕事ではないのか?
以前は地域の人が直接生徒に注意して終わる話。今は地域の教育力が落ちている。家庭の教育力も落ちているので落ちた分を学校が担っているのではないか。余計な仕事だけどこどもにとっては誰かが指導しなければいけない。必要なケアともいえる。ちゃんと予算と人をかけてほしい。
―――人を増やすというのは、教員を増やすのと専門家を増やすのとどちらが良いでしょうか
D さん(私高):長期的には後者が良いと思うが、現段階では前者を推し進めている動きがある。
―――人が増えたら個人の業務量や超勤が減るでしょうか?
A さん(初公高・主):人が増えてもその増えた人含めて管理できる人がいないと、現場は改善できない。きちんとしたマネジメントの仕組みを作らないといけないと思う。前職では自分の仕事をして自分が評価される、人の仕事を手伝っている時点で組織としてよくない、と教えられた。誰がやってもまわる組織でないといけない。
C さん(公中・副):今年の4月に赴任したので、本音で話せる人間関係を探っている。現場で問題意識を共有できる仲間を増やしていくと、現場を変えやすいと思う。
D さん(私高):いま私は教員の時短術に取り組んでいる。(教働コラムズのサイトでも 時短実践 をご紹介しています。)
まとめ、総論。
※ 割愛部分が多いため脈絡が繋がらない部分もありますが、個人情報への配慮としてご理解ください。
座談会「勤続3ヶ月、新任から見た学校」
— 教働コラムズ (@kyodo_columns) 2018年8月8日
ある競技の部活指導がしたくて教員を目指したという新任のAさん。教員の長時間労働や部活問題について、自分の立場から見えない問題点を知りたいということでご参加くださいました。また、地域の市議さんにもご参加いただきました。
https://t.co/1jcahw2oFC
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