私が大学生だった30年以上前、市内の高校の生徒たちの1人が、修学旅行中に、ホテルの窓から転落死した事故がありました。高層階の窓を伝って他の部屋へ移ろうとし、失敗したと記憶しています。
私が中学校教師になってから何年か経った頃、近隣の中学校の生徒たちの1人が、修学旅行中に、青森と函館を結ぶフェリーから海に転落した事故がありました。事故当時は重体と報道されたのですが、その後回復したのかどうかについての報道はありませんでした。
修学旅行では、日常生活や家族旅行などでは考えられないことが起こり得ます。家族旅行ならば、ホテルの高層階で窓伝いに他の部屋へ移るなどということはしないでしょうし、フェリーの上で普通に過ごしていれば、海に転落するなどということも起こらないはずです。そのようなことが起こる可能性が極端に高くなることが、修学旅行の特徴の1つです。
私たち引率教師は、その責任を果たし生徒たちの命を守るべく、最大限の努力をします。食事中は生徒たちの体調を気にかけ観察し、夜中には交代で寝ずの番をします。ゆっくりと風呂に入ったりシャワーを浴びたりすることもありません。移動中のバスの中で、うとうとと仮眠をとり、3日~4日の行程中、働きつづけます。
修学旅行中の勤務時間は、4週以内の割振り変更により、1日15時間分までは確保されますが、午後10時から午前5時の間は勤務を割り振ることができない時間になっているので、実際には打ち合わせをしても、見回りをしても、指導をしても、あるいは、体調を崩した生徒の対応をしても、勤務時間とはみなされません。書類上は勤務時間の間に置かれた1時間の休憩時間を自由利用することなどもできません。また、帰着後、本来は割り振り変更により勤務を要しない日にも、授業進度や学校行事と周囲への負担を気にして出勤し、出勤簿には押印せず、授業を行っているケースも珍しくありません。違法状態に「泣き寝入り」です。
生徒たちが修学旅行中の経験を通して身につけることが無いとは言いません。ただ、それが2泊3日~3泊4日もの時間とそれを支える労力、それらに合わせて決して低額とは言えない費用をかけさせてまで行うだけのことなのかどうかを考えると疑問です。私には、そこまでして実施しなければならないとは思えないのです。
「教職員の働き方改革」の必要性が叫ばれている今、違法状態の勤務の上でしか成り立たない修学旅行の規模縮小や廃止を探る良い機会だと、私は考えます。
コラム「修学旅行、そろそろ考え直しませんか?」
— 教働コラムズ (@kyodo_columns) 2017年9月2日
修学旅行中の勤務時間は、4週以内の割振り変更により、1日15時間分までは確保されますが、午後10時から午前5時の間は勤務を割り振ることができない時間になっている。
https://t.co/VPj9GjkBie
コラム「修学旅行、そろそろ考え直しませんか?」
— 教働コラムズ (@kyodo_columns) 2017年9月2日
「教職員の働き方改革」の必要性が叫ばれている今、違法状態の勤務の上でしか成り立たない修学旅行の規模縮小や廃止を探る良い機会だと、私は考えます。
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