見かけ倒しの部活動アンケート

さくらんぼ

(東北 高校)2017


 

 私の職場は、鈴木大地スポーツ庁長官名による「部活動に関するアンケート」の対象校に選ばれ、先日アンケートに回答しました。いやー名誉の極みです・・・と言いたいところですが。回答に何十分もかかるアンケートで、また、何通りにも解釈できる選択肢が多かったです。まるで大学入試センター試験「現代文」の選択肢を消去法で選ぶような設問でした。質問の意味を把握するのに時間がかかるばかりか、高校の実態にそぐわない選択肢しか選べない質問もありました。さらに問題なのは、自由記述欄ゼロのアンケートで、部活動問題の核心を反映させようがありません。完全に失望に満ちたアンケートです。文科省やスポーツ庁にとって都合の悪い、致命的な事実報告を封じて書かせない回答形式になっています。臭い物には蓋をする、まさに役所の十八番、こんな都合の良いアンケートは彼らのアリバイ作りに過ぎません。過酷でブラックな教員の現実が巷に出ないよう、当たり障りのない役所的手法で封じ込めようとする強い作為がにじみ出た力作です。

 

   この結果が公表されても、正しい部活動問題が反映されたとは絶対言えません。「世論のガス抜き」として、形だけは「みなさんの意見をよーく聞きましたよ。でも社会体育として外部の専門家を雇う予算が全然足りません。発言権が強い財務省と喧嘩してもとても勝てません。そんな訳で、学校からもうしばらく部活動は切り離せません。スポーツ指導員、あーそんなのもありましたっけ。でも国にはお金がないから、その人たちの雇用は都道府県や市町村の予算でやって下さいね。その代わり、先生方の特勤手当は今までより数百円上げますから、あとは現場で何とか工夫して頑張ってくださいよ。それに、部活動は学校の管理者たる校長の判断で進めていただいて結構ですから。あとは何とかうまいことやってくださいよ。ね、先生!」という文科省とスポーツ庁の巧妙で卑怯な言い逃れが最初から見え隠れしています。過去にこの類のアンケートは何度も実施されてきました。しかし、直近二十年くらいの変遷を見ても、実効性のある政策は一度たりとも施行されていません。政府諮問機関の提言なんて何の法的拘束力もありません。教員はずっと騙され続けているのです。部活動ガイドライン?何ですかそれ?あんな無意味なザルを作ってどうするの?それとも文科省やスポーツ庁が「私頑張ってます」アピールを世間に向かってしたいだけ?

 

   役所という所は、実害が出ない限り前例踏襲で何もしない。面倒なことは見て見ぬ振りのエキスパート、いやオーソリティーです。ただの紙切れ一枚で(しかも最近はさらに酷いことに、紙切れ一枚どころか全てPDFファイルを1クリックで全学校に一斉送信するだけで全てが完了)ちゃんと指導を周知徹底しましたという超手抜きぶり。こんなの仕事をしたって言えますか。私は、役所も役人も最初から全く信用していません。役人完全否定主義者です。むしろ役人のやる事はいつも疑って裏を取ります。過去に某所に勤めていた経験から、役所の狡猾な手口は熟知しています。行政がダメなら、やはり全国でどんどん司法に訴えるしかないのかもしれません。各地の地方裁判所で行政訴訟を同時多発的に起こすと、どんな新展開が期待できるのでしょうか。教員の人権は、強制部活動によって完全に搾取されています。

 

   ちなみに話が逸れますが、当県(Y県)では、生徒の部活動は全員加入制が公立高校でほぼ100パーセントです。教員も例外を除いては、全員強制顧問制です。挙げ句の果ては、教員定数は減っているが、部活動は潰させないという奇々怪界な論理が跋扈しています。一人の教員が二つ三つの部活動を兼務している異常な学校もあります。これっておかしくないですか。生徒数が減少して部員数も減っている。普通に考えれば、公立高校だって入学者の定員割れが数年続けば、当然統廃合の対象になりますよね。にもかかわらず、部活動は部員数が減っても、そう簡単に廃部にすることはまかりならぬ。何故でしょう?結局、裏で糸引く四天王がいるからに他なりません。その四天王とは、①追っかけ大好きの保護者たち、②金は出さぬが口だけ偉そうに出してくるOB会やOG会、③「子供のため」という呪文を乱用する「部活命」の教員集団と名誉心旺盛な管理職たち、そして④上納金をガッポガッポ吸い上げて私腹を肥やしている各種スポーツ協会です。この輩を撃破しないと、部活動の統廃合や教員の人権回復は進められません。まさに部活問題の抵抗勢力です。