自分も生徒も潰してしまった部活動

にこ@5656m5656

(20代 公立中学校教員)


 

 

 私は大学を卒業後すぐに正規の教員として中学校で働き始めました。1年目に与えられたのは担任と運動部の顧問でした。担任としての仕事は、何となく想像していたし周りの先生方の協力もあり何とかこなしていました。それでも毎日学校を出るのは21時を過ぎていましたが…。

そんな私が1番負担に感じていたのは部活動の存在でした。私自身中学生のときも部活動には入ってなかったし、スポーツの経験も全くありませんでした。運動部の練習が未知のものすぎて何も分からない状態でした。

 

 そんな中で4月最初の週にいきなり練習試合へ電車での引率を任されジャージを急いで揃えました。部員の名前や顔もまだ覚えていないので注意などもきちんとできず、休日におしゃれしてどこかへ出かけるだろう同年代を見ながら、自分がジャージで電車に乗っていることが苦痛でした。

そして、ほどなく主顧問の方が産休に入られたので私が主顧問を持たされることになりました。そうは言っても何も分からなかったので経験のある年配の副顧問の方に聞くと、自分も指導できないのでとりあえず練習試合に連れて行け、とのアドバイスをいただきました。今思えばバカだったと思いますが、当時はその言葉通りに土日には色んな学校との練習試合を入れました。もちろんそれだけでは部員は上手くなるはずもなく、指導に自信もないので部員との関係は悪化していきました。担任や授業で接しているときも一歩ひいてしまう自分がいました。

 

 また、顧問になると審判もしなくてはいけません。ルールもよく分からないのに笛を吹かなくてはならない…何となく形だけでやってみてもちょっとのミスで責められる…。分かりませんできませんと言おうものなら、勉強しろ!とのお言葉。妊娠中にも大会の審判をさせられそうになりました。ルールもよく分からない妊婦が審判をするなんて、それこそ競技に失礼だと思うのですが…。

そんなわけで、私はその競技が大嫌いになり(もともと好きではありませんでしたが)、部員たちにも本当にかわいそうな思いをさせました。スポ少の頃からその競技をしていて上手な子もいたのに、伸ばしてあげることができませんでした。ちなみに私の入っていた学年の部員たちは卒業後全員その競技を辞めています。

 

 

 

 中学校で部活動があることは知ってはいましたが、まさかここまで時間をとられるとは思っていなかったし、競技のことを何も知らなくても顧問を持たなくてはならない現状には驚きました。

 

 私は自分の担当教科が好きで、それを子どもたちに教えたくて教員になりました。そのために大学で教科のことを学び、試験もその教科で合格しました。スポーツに関することなんて大学でも一切学んでいません。

 

 私のような教員が、子どもたちの大事な中学生時代に競技を指導するというのはやはり無理があると思いませんか。中には事故などが起こらないよう、ちゃんとスポーツ科学も自主的に学んでいる、競技の指導者として本当に素晴らしい先生もいます。でも、そうでない先生の方が圧倒的に多いのです。教員はスポーツインストラクターではありません。中学生の身体のこと、休息のこと、練習メニューのこと、学ぶ時間もないまま顧問をしています。死亡事故も毎年のように起きています。素人が指導をすること、危険だと思いませんか。それとも、教員になったのなら勉強しろと思うのでしょうか。

 

 私は先生たちがまず自分の仕事(担任や教科指導)をきちんとこなすためにも、生徒がやりたいことをきちんとした指導者から学ぶためにも、部活動のあり方は考え直されるべきだと考えています。教員が余裕をもって担任や授業に臨めるとそれこそ子どもたちにとっても良いと思います。もちろん部活動に良い面があることも知っていますが、良い教育や才能ある子どもがこれ以上潰されないことを願います。