昨年(平成28年)の秋、全日本合唱コンクール岩手県大会を聞きに出かけた。私自身は合唱部のない小・中学校、合唱部は女声コーラスの高校で育ったので、合唱にはご縁が薄かったのだが、我が子が入学した学区の中学は中総体地区大会が終わると運動部を引退した3年生を中心に希望者を募って特設合唱部が組成される学校で、我が子は一年生だったが消去法で加入した「総合文化部」の生徒は学年を問わず強制参加させられてのご縁である。

 

 さて、50校近い中学校が参加したが、このうち常設の合唱部があって通年的に練習している学校はいかほどなのだろう。常設の合唱部があってもこういったコンクールや音楽会に他の生徒から応援メンバーを加えて「特設合唱部」として参加することも一般的で全国大会にそういう応援メンバーが大勢参加しているのだろうけど、我が子の中学と同様に母体になる常設の合唱部がなくて中総体の終了を待って組成している「特設合唱部」が過半を占めていたのだろうと思う。そういう全員掛持型特設合唱部であろう学校の中にも東北大会に駒を進めた学校もあったようだから、全員掛持型特設合唱部を否定するつもりはないが、中総体に向けて運動部で頑張りつつ特設合唱部としても通年的に声づくり・レパートリーづくりをするような活動のさせ方というのはできないだろうかと思えた。審査結果はともかく、常設合唱部で通年的に練習しているであろう学校の歌声やハーモニーは聴き応えに違いがあったように思えたからだ。

 

 岩手県の公立中学校は全て表向き各校判断・各校生徒会判断で全生徒に部活動加入を強いている。さらに地域や学校によっては加入した部活動に連動して半強制加入の中学生スポ少とか育成会活動とか父母会練習とかという社会体育的なものが組成されていて、平日夜間練習や土日祝の練習・練習試合・中体連公式戦以外の大会参加を担っている。私が住んでいる一関市はほとんど(たぶん全部)の中学のほとんど(たぶん全部)の運動部にそういう社会体育的なものがある。勝たせるために、強くさせるために、練習はやってもやってもやりたりなくなるものだろうけど、中学生の日常にもう少し余裕を持たせるべきではないか。部活の役割を社会体育等に委ねて、学校での朝練や放課後の練習は廃止してはどうかとブログなどで提言してきた。こうすることで放課後、先生方の勤務時間の中で1時間程度、通年的に希望する生徒を集めて合唱を練習することができるのではないだろうか。どこの地域で生まれ育ってどこの中学に入っても希望する生徒は通年的に練習して全日本合唱コンクールやNHK学校音楽コンクール・TBS子ども音楽コンクールなどに参加できるように、これぐらいの仕掛けをしても良いんじゃないかと思う。

 

 毎年秋には東日本各地から合唱団体を招聘する「東日本合唱祭」を開催していたり、全国大会常連の中学校があったりして「合唱の街いちのせき」を標榜してきた一関市なのだが全国大会常連校だった中学からも常設合唱部は消えて全員掛持型特設合唱部で東北大会に駒を進められなくなってしまったり、常設合唱部がある中学校は別な1校だけになってしまっている。「合唱の街いちのせき」としては淋しい実情ではないだろうか。一関市内の全員掛持型特設合唱部の学校の中には、通年的に昼休みに練習している学校もある。たしかに素晴らしい歌声とハーモニーで東北大会に駒を進めた。けど、昼休みは先生も生徒も一息入れさせるべきではないだろうか。そもそも昼練習していたら担当の先生に休憩時間は無いってことでしょう。そしてその学校が昼休みに練習していることを先生方の勤務時間である放課後で対応して、スポーツは社会体育等に任せて夜間と休日だけにしたら良いと思うのだ。これをやるためにも全員加入制をやめなきゃないだろうけど。

 

 我が子は消去法で渋々加入する生徒ばかりの総合文化部で時間つぶしの毎日(そういう部なのに下校時刻まで帰宅を許されない)だが、特設合唱部が始まってからの一学期中も夏休みも他の運動部と同じように総合文化部も毎日活動があり、特設合唱部の練習とダブルだったのでなかなか大変だった(一関だとスポ少とかが無いだけ楽だろって言われるだろうけど)ようで、日々の宿題と夏休みの宿題を終わらせることで手一杯になってしまい一学期末テストも夏休み明け実力テストも芳しくなかった。そんなものは本人の自覚の問題なのであって本人の努力不足だと一蹴されるかもしれない。でも、あれもこれもやらせることがオーバーワークと勉強しない言い訳づくりに加担する面は否めないだろう。好きこのんで加入したわけでもない総合文化部などやめさせて特設合唱部だけにさせたいのが本音なのだが、それを許さないのが岩手県の中学校。今年も我が子の中学は総合文化部の生徒たちに特設合唱部参加を強要してくるだろうが、仮に本人が参加したいと言っても特設合唱部に参加させないことにしようかと思い始めてもいる。

 

 だからということではないが、学習指導要領に抵触している全生徒強制部活加入ってそろそろやめられないのだろうか、岩手県。全員加入制ってより多くの種目を各校で維持するために半世紀前に中体連と校長会が県教委ともウラで握って始めたんでしょ。岩手県教委も一関市教委も「我々は中学生の部活加入を強制していない、強制しているとすれば、それは各学校だ」って知らんぷり。やはり文科省・スポ庁・文化庁の強力な指導が入らなければ部活の強制は終わらないのだろうか。合唱もスポーツもしたい、合唱だけにしたい、スポーツだけにしたい、どちらもやりたくない…事情的なことも含めてそういう多様なニーズに応じるべきなのではないかと思うのだが。