今こそ現場から声をあげるとき

 

神原 楓 @wakateowl

(30代 公立中学校教諭)


 

 

「部活の顧問の就任をお断りします。全員顧問制にも反対です。」

これは,私が毎年3月に校長先生に言い続けている言葉だ。

 

実は,この数年間で『部活の顧問拒否』に対する校長先生の対応に,明らかな『変化』が見てとれる。

校長先生の対応が劇的に軟化しているのだ。

結論から先に言えば,校長の対応が変化したのは,部活をめぐる教師の労働に対する世論が変化したからである。

 

「教師なら部活の顧問を務めて当然。教師なら部活によるサービス残業も当然。」

という世論が,ここ数年間で

「部活ってブラックだよね。いくら教師でもサービス残業の強制はおかしいよね。」

というふうに顕著な変化を見せた。

 

ここで,この数年の私の『部活の顧問拒否』の交渉の結果を見ていただきたい。

 

25年度…失敗→文化部主顧問を引き受ける。(A校長)

26年度…失敗→強制的に顧問に名前を入れられる。(B校長)

27年度…粘り強い交渉の末,成功。(B校長)

28年度…1分の交渉で成功。(C校長)

29年度…1分の交渉で成功。(D校長)

 

初めて部活の顧問就任を断ることに成功した27年度の交渉は,本当に苦労した。

法律,裁判例など,様々な根拠を用意し,校長先生に丁寧に説明し,やっとのことで顧問を拒否することができた。

しかしながら,28年度,29年度の交渉は非常に簡単なものであった。校長先生の対応に,明らかな『変化(=軟化)』があったためだ。

 

27年度は,部活問題対策プロジェクトの署名などが引き金となり,『部活による教師の過重負担』の問題点が数多くのメディアに取り上げられた。

これにより部活の顧問の強制は,広く世間から問題視されるようになった。

文科省も,部活による教師の負担を軽減すべく動いた。

 

『部活の顧問拒否=学校教育への反逆』

という認識が,今もなお学校現場に残るのは事実だ。

しかし,

『校長の部活の顧問の強制=パワハラであり世論への反逆』

という構図も,確実に世間と学校現場に浸透している。

 

このため,教師に部活の顧問を強制することは,もはや校長にとってかなり高いハードルとなっている。

『部活の顧問拒否』は難しくても,希望する部活の顧問に就任する,負担の少ない部活の顧問に就任する…などの交渉は,容易に成功するはずだ。

今こそ,部活に苦しむ教師は行動を起こすチャンスだ。

 

部活の制度の問題点や,顧問の強制の違法性は明らかになった。

部活の顧問を断る権利を求める署名には,多くの賛同が集まった。

世論も味方についた。

 

鍵は現場の先生方の手中にある。

扉を開けて一歩踏み出す時は,まさに今ではないだろうか。