中学2年生が地域の事業所や飲食店、公共施設などで5日間の職場体験をする取り組みを知っていますか?
普段は利用する側として訪れている場所などに働く側として受け入れてもらい、5日間を通して働くことの大変さを知ったり自分の進路を考えるきっかけとさせたりといったことが目的のようです。
保護者や教師以外の知らない大人のもとでの5日間の経験は中学生にとっては良い経験になると思います。
しかし、その裏では教師が、そしておそらく受け入れ先も、大変な思いをしています。
先に述べておくと、これは私の勤めている学校の話で、中には教育委員会が取りまとめを行っているなど負担が少ない学校もあるそうです。
私の勤務している学校は大規模校で生徒数は1学年300人を超えます。
まずはその人数分の受け入れ先を探します。
基本は前年度受け入れて下さったところにお願いしにまわるのですが、クラス数が増えたり生徒が問題を起こしたために次年度から拒否されたりといったことがあるので、新規開拓をしなければいけません。
もちろん教師が行います。電話やFAX、そして実際に足を運びます。
門前払いをくらうことも…。
そして、やっと数が揃ったら次に生徒を振り分けます。職種などの希望は聞きますが、全員の希望を叶えるのは無理に等しいです。
◯◯さんと◯◯さんはすぐに喧嘩するから離して…、◯◯さんのお母さんはここで働いているから避けてほしいと言われてたんだ…あ、◯◯さんは自転車乗れないから近いところじゃないと…など、様々なことを考えて生徒を振り分けなければいけないので、作業は勤務時間外におよぶことがほとんどです。
次は生徒に電話をかけさせ、事前打ち合わせの日程を決めさせます。また、打ち合わせの時に渡す用の自己紹介のカードを書かせます。
そして生徒は決まった日時に授業を抜け出して事前の打ち合わせに行きます。
それと並行し、教師の挨拶回りも行います。
そしていよいよ本番の5日間を迎えます。5日間授業はありませんが(他学年の授業に入っていれば通常通りあります)、欠席の生徒の対応や少し距離のある事業所への送迎、喧嘩など問題行動での呼び出し、記録用写真の撮影などいつもと違う業務に追われます。
また、受け入れ先はいつもの仕事に加えて慣れない中学生への指導をして下さいます。ただただ善意で受け入れて下さることに感謝しかありません。
5日間が終わると事後の学習があります。お礼の手紙を書いたり体験レポートを作ったり…この準備もしなければいけません。
最後に生徒、受け入れ先、保護者へのアンケートの実施と集計、県への会計報告も待っています。
受け入れ先の確保、100件近くへの挨拶回り、300人以上の生徒の振り分け、事前事後学習のためのプリント作り印刷、受け入れ先への文書作り印刷、保護者向けのプリント作り印刷、電話のマナー指導、手紙の書き方指導、お礼挨拶、アンケートの実施集計、会計業務…私の学校ではこれらの全てを教師が行っています。もちろん、普段の担任業務や授業に加えてです。
県から予算は出ていますが、そのお金が受け入れ先や教員に入ることはありません。交通費やコピー用紙代などに使われます。
前述しましたが、生徒にとって良い経験になることは確かです。人生が変わる子もいるかもしれません。
ただ、「子どもにとって良い」からと教員の負担を考えずに実施するのは間違っていると思います。
始まった当初は、生徒が自ら体験先を探すなど、ここまで学校がお膳立てをする必要がなかったとも聞きます。いつからここまで教師がすることになったのかは分かりませんが、現在私の学年ではみんながあちこち動き回って本当に大変です。
今話題の部活動にしても、小学校での英語やプログラミングなどにしても、「子どもにとって良い」面は確かにあると思います。
しかし、学校は子どもにとって良いことを詰め込むだけの場所ではありません。教員にもお金にも場所にも時間にももちろん子どもたちにも限界があります。どこかが無理をしなければいけないものなら失くしたり改善したりすることも考えてほしいです。
コラム「うちの学校の職場体験が大変すぎる件」
— 教働コラムズ (@kyodo_columns) 2017年5月22日
生徒にとって良い経験になることは確かです。人生が変わる子もいるかもしれません。
ただ、「子どもにとって良い」からと教員の負担を考えずに実施するのは間違っていると思います。 https://t.co/MFLM63AyKz
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