· 

第8回中教審学校における働き方改革特別部会「中間まとめ案」議論に思う

tekinneasy 北海道 50代 中学校教諭・休職専従組合役員

 

 

 

11月28日に「中教審第8回学校における働き方改革特別部会」が行われ、それ以降の何日かの間、SNSを中心にその特別部会に関する意見等の書き込みがありました。そのほとんどが特別部会で提示された「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)【案】」(以下、「中間まとめ案」と表記)での部活動の位置付けについてついての批判でした。

 インターネット上、ある報道では「がっかりした。憤りを覚える。今日の案では、部活動の位置づけが業務であるということが示されたが、これから新しい学習指導要領が実施されるが、質の高い授業を提供するためには、部活まではできない。授業に専念させてほしい」という高校で教員なさっている方のインタビューが掲載され、SNS上では同様に「憤り」を覚えた方々の意見などを目にしました。

 

 部活動指導の位置付けが業務であるということが示されているのは「新学習指導要領」でのことです。特別部会が独自にその判断をしたものではなく、現状をそのように分析したものです。いくら私達が「部活動の指導は業務ではない」と主張しても、「中間まとめ案」に「学校の業務ではない部活動が…」などというように記述されることは、中教審特別部会という性質上あり得ないことです。

 今回の「中間まとめ案」で部活動については「学校の業務であるものの,必ずしも教師が担わなければならない業務ではない」「部活動指導員をはじめとした外部人材,というように教師以外の者が担うことも積極的に検討すべきである」「学校の業務と位置付けられ,現状では,教師が担わざるを得ない状況である」「顧問については,教師の勤務負担の軽減や生徒への部活指導の充実の観点から,各校長が,(中略)外部人材の活用を積極的に行うとともに,大会等の主催者においては,関連規定の改正等を行い,部活動指導員による引率を(後略)」「地域で部活動に変わり得る室の高い活動の機会を確保(中略)学校以外が担うことも積極的にすすめるべきである」等と記されています。加えて、「中間まとめ案」の議論の中では、妹尾委員から「学校が自由に考えられるもの」「一方で裁量がありながらここまで過熱化してきたので、裁量だけでは変わらない」「自主性自立性だけではなく歯止めをかける議論をスポーツ庁も含めやっていく必要がある」といった発言、相原委員から「将来的には,本来の業務に注力できるように、(P23)と、ポジティブなのはいいが、深刻さを出すため、部活動が教員の業務ではないと明記したうえで、そうしたほうがいい」という発言があったようです。

 また、この日の議題として「中間まとめ案」の前に「業務の役割分担・適正化に関する具体的な論点(部活動)について」という議題で議論がなされています。時間の流れから考えると、この議論が次に提示される修正された「中間まとめ案」にすぐに反映されるものではないと考えられます。当然、「中間まとめ案」が出されて議論が終了するなどということはないはずです。今後も「答申案」立案に向けて継続して議論がなされるはずです。

 

 そこで、部活動に関して、今後の方向性としてぜひ示していただきたいと私が考えることを、次のようにまとめました。

 ◇部活動が、実際は教員が担わなければならない業務となっている

 ◇部活動が教員の超勤多忙の理由・原因となっている事実は看過できない

 ◇部活動は、必ずしも教員が担わなければならない業務ではないことから、学校(の業務)から切り離し(社会活動)地域クラブとする

 ◇部活動等の現状から、すぐに学校(の業務)から切り離すことは現実的でないため、そのタイムスケジュールとリミットを、文科省が責任を持って明確に示すべき(各種団体との調整を含む)

 ◇部活動を学校(の業務)から切り離すまでの間、教員の負担を少なくするために外部人材などの積極的な活用をすすめ、文科省・教委が責任を持ってその確保等にあたる

 ◇部活動関連以外の超勤多忙問題解決をさらに早急にすすめた上で、現在意欲を持って進んで部活動の指導を行っている教員が希望する場合は、プライベートな時間に地域クラブ指導者として活躍してもらうことができる制度を整える

 

 これらを進めるためには、その前提として、部活動関連以外の様々な問題の解決が進められていなければなりません。今回の「中間まとめ案」が提示され議論されたことについて、その部分に対する反応があまりにも薄いことに、私は驚いています。部活動関連以外にも多くの問題があり、それらについての特別部会での議論にも注視しなければならないことは言うまでもありません。「部活動改革」は「学校における働き方改革」の1つではあるものの、そのすべてではないのです。

 今回の「中間まとめ案」に記されていることには部活動以外の様々な部分でも、考えるところはたくさんありますが、特に校内清掃、休憩時間、教職員定数、そして「勤務時間の客観的把握とそれによって明らかとなる問題の解決」の4点について、私の考えをつぎのように簡単にまとめました。

 

 校内清掃については、「中間まとめ案」に記述されていることについてどの委員からも言及がされていないのか、教働コラムズに掲載されている「傍聴の記録」にも具体的な記載が見当たりません。またその後、SNS上でもほとんど触れられていないと思われます。ただ、校内清掃も部活動と同様に教育課程に位置付けられていない児童・生徒の活動で、それに対する清掃指導を求められています。教員の業務についてその性質と問題点を挙げ改善をめざすならば、基本的な考え方は部活動と共通する問題です。清掃指導も学校の業務から切り離すべきだと私は考えます。

 休憩時間について「中間まとめ案」では、その法令上の説明が記載されているのみです。青木委員から「勤務時間に注目して方策を書いているが、休憩に関する言及が弱いので書いてほしい」という指摘があったようです。私も同様に考えます。休憩時間を与えることができていない現状は明らかに法令違反であり、問題視されるべきですし、早急に改善されるべきです。

 教職員定数について「中間まとめ案」では、勤務の長時間化の要因として「改善が十分ではなかったのではないか」と記されているにもかかわらず、その他に具体的な改善を求める記述などがありません。清原委員より「できれば教員こそ増やしてほしいと。それが現場の声ではないか。残業手当の確保より、教員確保を要求したい」という発言があったようです。また、教働コラムズの「傍聴の記録」では見つけられませんでしたが、私が他から入手した各委員の主な意見には、妹尾委員が「今まで学校は子どものためにと業務を増やしてきた。業務が増えると人的措置が必要で予算がかかるという記載も明確に」という趣旨の発言をしたことが記されていました。教職員定数改善とそれを早急に進めるための財政措置の必要性については、もっと明確に記されるべきだと私は考えます。

 「中間まとめ案」では「勤務時間管理の徹底」として記載され、委員によって議論されていることについて、まず、私はその言葉の選び方が適切ではないと考えます。必要なことは「管理・徹底」ではなく「改善」ですから、「出退勤時刻の客観的な把握とそれによって明らかとなる時間外勤務問題の解決」だと私は考えます。「中間まとめ案」には「勤務時間の把握を形式的に行うことが目的化し,真に必要な教育活動を疎かにしたり,虚偽の記録を残す,又は残させたりすることがあってはならない」「勤務時間管理の徹底と併せて,業務の削減や勤務環境の整備を進めなければならないと自覚し,必要な取組を実施すべきである」と記されています。清原委員はこういったことを「当たり前だ」とし、「勤務時間に関する数値で示した上限の目安を含むガイドラインを早急に検討して示すべきである」としたことを「思い切って記述をしていただいた」と評価しました。善積委員は「勤務時間管理が手段であって目的ではない」という記述について「その通りだが、その先『管理の徹底』とあるが、労働時間の把握ではなく分析してどうつなげるかが管理だが、なかなかそこまでいかないことになりがちなのが学校現場。分析という観点の文言を入れてほしい」と述べています。やはり「出退勤時刻の客観的な把握とそれによって明らかとなる時間外勤務問題の解決」が必要であり、その「問題」については、すでにこれ以外の記述や議論で明らかとなっているので、国全体の制度を担当する文科省・任命権者の立場にある教委・現場の責任者としての校長の責任であることを明記すべきだと、私は考えます。

 

 私達は今後もこの特別部会で提示される案や議論、それを受けた文科省・教委等の具体的な動きを注視し、この「学校における働き方改革」を「働かされ方改革」や「働かせ方改革」とさせないようにしなければなりません。