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なぜ、教育行政は、「教員版残業代ゼロ法」を変えたくないのか?

 

匿名

 

 

なぜ、教育行政は、「教員版残業代ゼロ法」を変えたくないのか?

 

 

給特法という名の「教員版残業代ゼロ法」がある。半世紀前につくられた法律である。教育政策を立案する教育行政関係者にとっては、なんとしても変えたくない法律である。理由は、簡単である。教員に新たな仕事をいくら増やそうとも、時間外勤務手当を支給する必要がないからだ。外国語の教科化、プログラミング教育、主体的・対話的で深い学び、カリキュラムマネジメントなどなど、2020年からはじまる新学習指導要領には、新規メニューが目白押しだ。「教員版残業代ゼロ法」によって、学習指導要領を検討した中教審委員、文科省の職員は、教員の労働時間がどれくらい増えるか、新たに必要とされる人件費はどれくらいかなど、まったく考える必要はない。

「今でも教員には授業準備の時間が足らない実態がある。外国語の教科化を導入するのは無茶苦茶だ。」という批判に対しては、文科省は「必要な教員定数を確保する。」と答える。文科省が、新たな施策を始める時には、といつもそう言う。確かに、文科省はその努力はしてきたが、現場に必要とされる教員数が確保されたことはない。そして、下記のような展開が延々と続く。

 

教育行政による新たな新規事業発案⇒教育行政「人を増やしますから」と教育関係者に説明⇒効果的な人員増が実現したことはない⇒教員の労働時間の増加、または、教育委員会は人件費がかからない「臨時・非常勤教員」によってしのぐ(最近、読売新聞は、臨時教員の給与について、違法な実態が放置されていることを報じた。)。

教員版残業代ゼロ法案(給特法案)の国会審議において、文部大臣はこのような答弁をおこなった。

「この法案が通ったからといって、それによっていままで以上にぎゅうぎゅうと先生方の労働を強いていくというようなことにはつながっていかない」

この答弁は、建前上、今日でもまちがっていない。

教員版残業代ゼロ法のもとでは、勤務時間終了後に行った成績処理、授業準備などは、労働ではなく、教員の自主的、自発的な活動である。平成18年の文科省勤務実態調査でも、勤務時間終了後には、教員に時間外労働を命ずることができる職員会議などはほとんど行われていなかった。建前としては、教員版残業代ゼロ法は、遵守されている。遵守されている以上、教員版残業代ゼロ法を見直す必要はない。

 

   残業代ゼロ法である給特法の最大の問題点は、教職調整額が教員の勤務実態と比較して少ないことではない。明らかに労働であるにもかかわらず、それを、教員本人の自発的、自主的な活動と整理している点である。

 

     教員版残業代ゼロ法が存在する限り、新たな教育施策は次々と発案され続ける。

 

    次回は、教員版残業代ゼロ法のもとで、長時間労働に苦しむ教員は、裁判所によっても救われない事実をお話したい。

 

 

⇒ 第2回「教員は長時間労働によって命を奪われても救われない」