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表舞台に立つ女性は、なぜ少ないのか

パーシー@remember_wills 九州 公立高校教諭

 

 

 私の勤務校は九州地方、山あいの風光明媚な土地にあり、創立100年を超す伝統を持つ進学校である。風景同様、古き良き時代の日本の教育が残っており、学級崩壊、いじめ等の問題はほとんどなく、保護者も学校運営に協力的である。

 しかし一方で、グローバル化著しい社会に出て行く生徒たちを育てる場として見過ごせない問題を抱えている。それは、「表舞台に立つ女性が少ない」ということだ。

 具体例として2点挙げる。まず、主任(学年、校務分掌)クラスの女性教員の少なさ。学校の特定を避けるため明確な数字は書かないが、10数名の主任のうち、女性はただ1人である。

 次に、体育祭の応援リーダーに女子がほとんど入らないということ。応援リーダーは、団長を含め30名強だが、うち女子は1人いるかいないかである。逆に応援リーダーの衣装を作る衣装係は、30名強のうち男子は1人いるかいないか。

 このように、役割分担において明らかな性差が見られる。

 なぜ前者のような事態が引き起こされるのか。それは、主任業務の繁忙さにある。特に学年主任は業務が多岐にわたり、時間外労働も100時間近くになることが普通である。よって家事負担が女性にのしかかる中両立は困難であるし、体力的にも女性には厳しい。さらに主任クラスとなって業務をリードし、全体をまとめることに苦手意識を感じる女性も多くいる。

 後者の問題の原因としては、勤務校が伝統的に男性応援リーダーのみで体育祭を運営してきたことが考えられる。同窓教職員も多く、他校はどうあれ「伝統」を堅持したいという考えがある。生徒の視点で見ると、男子向けの激しく体を動かす応援合戦が行われるため、女子ではそれについていきづらいことや、リーダーの交際相手となりその衣装を縫うことが女子の間でステータスになっていることが挙げられる。

(以上の原因については、私が直接聞いただけではなく生徒・教職員向けアンケートからも考察した結果だ)

 勤務校は教職員には男女の偏りがあるが、生徒は女子がやや多いくらいである。主任クラスに女性が少なくて、どうして学校運営に女性らしい視点が生かされようか。ましてそのような教職員の姿を見、どうして生徒たちが自分たちの置かれた現状を客観視し、変化させようと行動できるだろうか。

 私は教員として、「伝統」の重みを受け止める一方、巣立った後の生徒が飛び込む社会と未来を見据えた教育を行っていきたい。冒頭にも述べたが勤務校の生徒は古き良き日本の美点を持っている。さらに、例えば定期考査で教員が採点ミスで×を○と付け、自分の点数が下がる場合でも申し出るような正直さをも持っている。このように純粋で高い可能性を持った生徒たちが、固定観念にとらわれることなく自由に世の中に羽ばたいていけるよう、教師として私は今、何をするべきか。そう自問しながら声を上げ続ける毎日である。