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不幸の連鎖を食い止めるために

匿名希望 20代 教員の友人

 

 

 

先日,教育に関連する痛ましいニュースが飛び込んできました。

 

それは,東北地方で,「登校中の中学生が,高校教諭にはねられ重傷」というニュースでした。

中学生さんがはねられてしまったことが,とても心苦しく,一日も早い回復を祈るばかりです。

 

しかしながら,この問題の本質は,もっと別な,隠れたところにあるような気がしてなりません。

 

私の友人は,中学校の教員をしています。

朝は7時半に学校に行き,学校を出られるのは21時ごろになります。もちろん,さらに遅くなるときもあります。

そこからさらに車を運転して自宅に帰り,夕飯の支度をしてから夕飯を食べたり,丸つけを行ったり,明日の授業・部活などの準備をして寝ることになるわけですが,睡眠時間はほとんどなく,4時間ほどになってしまうそうです。

残業は月に100時間を超えており,土日には部活動があるため,1ヶ月に1日休みがあればいいほうという状況です。

「何も考えられない,生きているだけで精一杯」と話されたことがあり,それがとても頭に残っています。

 

だいぶ前になりますが,友人が,しきりに「学校へ行きたくない」と言い,毎日腹痛や下痢・吐き気と戦いながら学校へ行って働いていた時期がありました。

もちろん,病院が開いているうちに仕事が終わりませんし,土日は部活がありますから,病院に行くこともできませんでした。

そうした中で,友人は追突事故を起こしてしまいました。

幸いお相手の方に怪我はなく,車がへこんだ程度であり,お相手の方も「大丈夫だよ,気にしないでね,このくらいのへこみは直せばいいからね」と言ってくださったそうですが,事故を起こしてしまった友人は,「なんてことをしてしまったんだろう」と,大変なショックを受けていました。

教育委員会のほうからも,何らかの「お言葉」があったかもしれません。

 

しかしながら,しっかり休む間もなく仕事に行き,さらに数ヶ月休みなしで働いていれば,判断力の低下を引き起こすでしょうし,心疾患などのリスクがあることも研究からわかっています。

 

今回,事故を起こした高校の先生も,「ぼーっとしていた」と言っていますが,友人のような労働状況であることは,十分に考えられます。

教育委員会は,「事故を重く受け止めている。被害者の一日も早い回復を祈るとともに、警察の捜査を待って対応を検討する」とのコメントを残していますが,果たして,この先生への対応を検討するだけで良いのでしょうか?

この先生が働く高校や地域の教育委員会は,この先生が適切に運転ができるような環境を整えていたのか,私はとても疑問に思っています。

しかしながら,そういった報道は,なかなか目にする機会がありません。

 

私は,文部科学省や教育委員会などが現場の先生方に強いている長時間労働は,先生方やそのご家族を不幸にするばかりでなく,最終的に学校に通う子どもたちを不幸にしてしまう危険性があると考えます。

この事故や,教員の不祥事から学ばなければならないのは,その時の対応や教員の処分ではなく,もっともっと根本的なところなのではないでしょうか。

 

 

 

 

※ 産経ニュース「仙台で男子中学生はねられ重傷」 2017.12.21 07:00 より

 

 20日午前6時半ごろ、仙台市太白区鈎取の市道交差点で、同区の男子中学生(12)が乗用車にはねられる事故があった。この事故で男子中学生は全身を強く打ち、骨盤骨折などの重傷を負った。命に別条はないという。

 

 仙台南署は乗用車を運転していた仙台市泉区東黒松の県立仙台西高の教諭、嘉藤敏之容疑者(48)を自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで現行犯逮捕した。調べに対し、「考え事をしていた」と供述しているという。

 

 

 事故当時、嘉藤容疑者は通勤途中。男子中学生は通学途中で、横断歩道を徒歩で渡っていた。