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ブラックの原因はそこではない

狩野伸行 近畿 40代 公立中学校 吹奏楽部顧問

 

 

 

枠の中で耐え続け、自分の管理下で子ども達を磨くことが、世界を救うことだと長年信じていました。

しかしながら、多くの時間と心とお金を失って初めて目が覚め、現状を変えるために行動しました。

同僚・生徒・保護者・地域と正面から向き合って、自分事として問題をとらえてもらい、

皆でビジョンを共有し、協働作業を重ね、何が必要で何が不必要か整理しました。

子ども達を自律させ、管理・拘束をやめ、顧問のできる時間に制限して活動しました。

活動時間が半減した「ホワイト部活」で今年も全国大会に出場できたのは、

自分たちで道を切り開いていく子ども達の素晴らしい力と、支えてくれる仲間のおかげでした。

 

部活動の制度設計には確かに不備が多く、暴走列車の例えは適切かもしれません。

しかしながら、暴走しないように我々はどれほど本気で連携したといえるでしょうか。

自律した学修者になるための方法を、自律せずに学ぶことはできません。

 

また、教師の年輪は勤務年数では決まりません。

どれだけ問題に直面し、研究授業をし、試行錯誤を続けてきたか・・・

どんな仕事でも10年続ければ、それなりのキャリアが磨かれてきます。

学校や教科の枠に守ってもらわずに、己の「生きる力」を育てていますか?

研修に休憩に行って、生徒には聞く態度を要求していませんか?

問題解決能力を磨かない指導者に、指導される生徒の立場になってみてください。

「一般では当たり前」にきちんと反論できますか?

脱線しますが「教育は農業に近い」と説明すると、ほとんどの人が納得してくれます。

 

仲間を信じ、子どもの手を放し、重すぎる荷物は減らし、共に歩んでいく。

きっとできるはずです、あなたは決して一人ではないのですから。

国の動きが遅いのは今でもこれからもであり、ブラックの原因はそこではないのです。

どんな仕事でも言われたことだけでなく、自分でマネジメントしなければなりません。

部活どころか有給休暇も消化できないのは、制度だけが原因なのではありません。

 

もちろん、オンラインでの発信を否定しているのではありません。

もうそこにしかライフラインがない状況の人も、間違いなく存在します。

しかしながら、救急車は本当に必要な人のためにあるのです。

枠の中で耐えがたきを耐え続けても、王子様は迎えに来てくれません。

枠を超える勇気、そして枠内で連携する勇気を持たねばなりません。

幸せの青い鳥、本当の仲間は、向こう三軒両隣に机を並べている同僚たちなのです。

外部に救いを求める前に、動ける人は動き出すことが必要ではないでしょうか。

 

仲間と共に。